研究概要 |
北海道天売島の海鳥繁殖地において、平成6年5月〜7月の繁殖期間中、ウミウの繁殖生態及び採食行動の調査を行った。マイクロデータロガーを用いた採餌潜水行動調査、観察及び発信器の利用による給餌回数、行動の時間配分等の繁殖行動調査、一腹卵数、孵化率、平均孵化日、ヒナの生存率、発育成長、巣立ち率等の繁殖成功調査、ひな及び成長の吐き戻しとペレットの分析による食性調査を行い、それらの結果を平成4,5年(H4,H5)の結果と比較した。 天売島周辺の漁獲高の年変動と天売島で繁殖する他の海鳥の餌構成と繁殖成功の年変動からH4はイカナゴ、H6はカタクチイワシが優占し、H5は不作な年であったということがわかっている。ウミウもH4,H6にはそれぞれおもに浮き魚であるイカナゴとカタクチイワシを食べていたが、H5は底層生のホッケを主な餌としていた。潜水行動を比較すると、H5は他の2年に比べ深く長く潜っていた。 採餌行動を比較すると、H5は採餌に費やした時間が長く、一方H4は短いtripが多かったことから、H4は沿岸の近いところで十分に餌をとることができたが、H5は餌がとり難かったと考えられる。ヒナの成長率には年間差はなかったが、巣立ち率はH4,H6はともにH5に比べて高かった。死亡したヒナの日令を比べると、H5,H6,H4の順に大きくなっていた。以上をまとめると、ウミウは浮き魚が多いときには浮き魚を食べ、少ないときには採餌に多くの時間をかけ、深い深度で餌をとっていた。つまりウミウは餌条件の変化によってその採食パターンを変化させることができる。
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