ソラマメの発芽時では、吸水後約29時間目にrRNA遺伝子の発現が最初のピークを迎える。本研究ではこの時期の発芽根から核タンパク質を抽出し、rRNA遺伝子のプロモーターに塩基配列特異的に結合する成分の解析を行った。 各種のカラムクロマトグラフィーにより、3種類の画分にプロモーター結合活性が存在することがわかった。DNaselフットプリンティングの結果より、これらのタンパク質の結合位置はほとんど同じであることがわかった。また、塩基に変異を持たせたプロモーター配列の解析より、3種類のタンパク質が結合に必要とする塩基もほぼ一致していることがわかった。しかし、これらのタンパク質とDNAとの結合安定性を調べたところ、量的には少ない一つの成分の安定性が他の2種に比べ、高いことがわかった。これらのタンパク質がどのような関係に在るのか、そして、それぞれどのような方法でrRNA遺伝子の転写に関与しているのかがこれらの課題である。例えば、リン酸化などのタンパク修飾で3種類に分画されるのであり、これらの内にある状態のものが転写に関与している可能性や、ある分画は活性化に、他の分画は阻害にと拮抗性に働いている可能性も考えられる。 従って、これらの問題を解決する一つの方法として、これらのタンパク質の遺伝子のクローニングを試みた。サウスウエスタン法、マウスのUBF遺伝子をプローブとしたスクリーニングでは候補のクローンを得ることができなかった。従って、アミノ酸配列の情報を得るために、結合蛋白質の完全精製を試みた。数種のカラムで精製したタンパク質をサンプルとしたプレパレイティブな電気泳動を行った。その結果、一応数本のバンドに精製され、このような方法で完全精製が行えるめどがついたと考えられる。今後の問題はアミノ酸配列の分析に必要な量のタンパク質を集めるためのスケールアップであると考えられる。
|