研究概要 |
光合成光化学反応において還元力の生成の役割を担う光化学系Iはチラコイド膜中で数多くのサブユニットからなる複合体を形成している。糸状のラン色細菌Anabaena variabilis ATCC 29413においてフェレドキシンの還元に直接関与するサブユニットPSI-Cをカナマイシンカートリッジを挿入することによって欠損させた変異株T398-1を材料に用いた。この変異株および野性株よりチラコイド膜単離し、これを非変性のアクリルアミドゲル電気泳動にかけることにより、光化学系I反応中心複合体の単離した。この反応中心複合体のサブユニット組成を調べるとPSI-Cだけではなく、PSI-D,PSI-E,PSI-Lをも欠いていることを見い出した。ところが、変異株のチラコイド膜、および細胞抽出液においてウェスタンブロッティングによりPSI-D,PSI-E,PSI-Lの存在を調べると、PSI-DとPSI-Eは欠損していたものの、PSI-Lは存在していることがわかった。このことはPSI-Cの欠損によって、PSI-Lタンパク質の蓄積は影響を受けないものの、その複合体への組み込みが影響を受けると結論できる。また、PSI-DとPSI-Eはそのタンパク質の蓄積そのものが、PSI-Cの欠損によって不可能になってしまうと結論できる。本研究は、系I反応中心複合体の形成過程を生体内で調べた数少ない成功例であり、今後、単離した複合体の解体再構成実験とともに、系I反応中心複合体の成り立ちを調べる上で重要なステップになると思われる。
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