研究概要 |
裸子植物のクロマツの葉緑体においてRNAエディティングが起きているかどうかを検証するために、コンピューター解析から予想されたエディティング部位を含む断片をクロマツの全DNAと全RNAから合成したcDNAからPCRによって増幅した。それらのDNAとcDNAの断片の塩基配列を決定し、両者の間で比較した。その結果、解析した10種のクロマツ葉緑体遺伝子(atpA、atpF、petD,petG、psaB、psbB、rps14、ORF62、ORF320)の前駆体RNAにおいて、24ヶ所でRNAエディティングが起きていることが明らかとなった。そのRNAエディティングのタイプはすべてC→U変換によるものだった。RNAエディティングによるコドンの変化のパターンは、これまで被子植物の葉緑体ではコドンの2文字目が変化するのがほとんどであったのに対し、クロマツではコドンの1文字目が変化している例が多くみられ、被子植物葉緑体では報告のなかったタイプのコドン置換も7種見つかった。それらのなかで特殊なものとして終止コドンが形成される例が2例(petD、ORF62)見つかった。なかでもORF62についてはRNAエディティングによって開始コドンと終止コドンの両方が形成されることにより、ORF62から植物間で保存されたサイズのORF33に変化することが明らかになった。このような例は動植物をつうじて初めての報告である。以上のように裸子植物のクロマツにおいて葉緑体でのRNAエディティングの機構が獲得されていること、そのRNAエディティングのパターンは被子植物のものとは異なっていることが明らかとなった。
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