多くの水中光合成生物は低CO_2濃度で培養すると、CO_2律速条件下での光合成速度が、高CO_2濃度で培養した時に比べて著しく高い。この光合成炭酸固定における環境適応は、低CO_2条件下で誘導される無機炭素輸送濃縮機構による。その構成因子としてCO_2(またはHCO_3^-)ポンプと炭酸脱水酵素(CA)が考えられている。現時点ではポンプの実体は不明である。 本研究では、ラン藻を実験材料とし、無機炭素輸送濃縮機構を解明する。CO_2ポンプ遺伝子の検索を、高CO_2要求性変異株の形質転換により行ない、ポンプの実体を解明する。ラン藻CA遺伝子(icfA)と炭酸固定酵素RubisCO遺伝子の間約20kbについてDNA塩基配列を決定した。この領域には炭素固定に関わる遺伝子としてアルドラーゼ・NADHデヒドロゲナーゼのサブユニット4がコードされていた。またこの領域に挿入変異を導入して、得られたカナマイシン耐性株のCO_2要求性を調べたが、高CO_2要求株は得られなかった。
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