本年度は、ホウライシダ原糸体細胞を用いて、他の植物細胞で前期前微小管束上に存在していることが知られているアクチン繊維、cdc2キナーゼホモログの分布を検討した後に、低温により破壊した前期前微小管束の再形成におけるアクチン繊維の挙動の解析を試みた。 実験材料として用いたホウライシダ原糸体細胞は、赤色光下で培養することにより非常に細長い細胞(直径20μm、長さ500μm以上)になり、引き続いて青色光を照射することにより、細胞先端部で同調分裂を行う。分裂直後には、細胞先端部に前期前微小管束が同調的に形成される。前期前微小管束が同調的に形成された細胞集団を用いて、アクチン繊維、cdc2キナーゼホモログの分布を検討した。アクチン繊維はロ-ダミン・ファロイジン染色法により前期前微小管束上に検出された。しかしながら、抗PSTAIR配列抗体によるcdc2キナーゼホモログの検出は、ウエスタンブロッティング法により該当する分子量に反応するタンパク質が存在したにもかかわらず成功しなかった。前期前微小管束のアクチン繊維がサイトカラシンBで破壊されるか否かを調べた。50μg/mlという高濃度のサイトカラシンBを用いても、アクチン繊維の配向は乱れたが完全には破壊されなかった。 低温により前期前微小管束を破壊したときのアクチン繊維の挙動の検討を試みた。通常用いている架橋剤MBSを用いたアクチン、微小管二重染色法では、微小管が固定中に重合してしまい、低温処理による微小管の脱重合後の再形成過程の観察は困難であった。現在、染色法を検討中である。
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