ラット肝臓よりミトコンドリア画分を調製し、イオン交換クロマトグラフィー、ショ糖密度勾配遠心分画法などによって、HSP60タンパク質を精製した。精製したHSP60タンパク質は、in vitroのシャペロニン活性を有していたが、得られたタンパク質量が少なく、多量のHSP60タンパク質を用いる生化学的性質の検討には、大腸菌によるHSP60タンパク質の発現系の構築が必要となった。 すでに明らかにされているラットミトコンドリアHSP60遺伝子配列より適当なDNAオリゴマーを合成し、それをプライマーとして、PCR法を用いてラット肝cDNAライブラリーより、HSP60のcDNAを調製した。このcDNAを発現ベクター(pET15)に組込み大腸菌に導入し、形質転換株を大量培養し、産生したHSP60タンパク質の精製を行った。精製したHSP60の分子量をnaitive PAGE等によって測定した結果、大腸菌で発現させたHSP60タンパク質はモノマーになっていることが明らかになった。ミトコンドリアにおいてHSP60は、ヘプタマ-(7量体)のリング状構造をとっており、この発現系ではnativeな構造のHSP60のタンパク質は合成されなかった。その理由として、短時間に大量発現させたため、大腸菌内の分子シャペロン系が働けなかったこと、HSP60タンパク質のホールディング・アッセンブリーには、ミトコンドリア膜系に存在するシャペロンが必要であること、などが考えられる。現在、発現ベクターやコンピテントセルの種類や発現誘導の条件検討を行い、naitiveな、シャペロニン活性を有するHSP60タンパク質の調製を試みている。
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