本研究課題では、鳥類に於けるMSHの生理作用を調べると共に、鳥類に見られるMSHの主要分泌器官、下垂体中葉消失の原因を知る手がかりを得ることを目的としてニワトリMSHリセプター遺伝子のクローニングを試みた。既得のマウス色素細胞特異的MSHリセプター(MC1-R)cDNAをプローブとしたニワトリゲノムDNAサザン解析の結果、およそ1.8kbのBamHl断片を検出した。同プローブを用いたゲノムDNAライブラリーのスクリーニングの結果、この断片を含むクローンを得た。塩基配列を決定したところ分子量35297Daのペプチドをコードする翻訳領域を含んでいた。このペプチドは、N末端側に3カ所の糖鎖付加部位を持ち、Gタンパクにカップリングしたリセプターに共通な7つの膜貫通ドメインを有した。ホモロジー検索を行ったところ哺乳類で発表されているMC1-Rに最も高い相同性を示した。これらの事実から得られた遺伝子は、ニワトリに於けるMC1-Rであると結論づけた。この遺伝子は、哺乳類同様イントロンを持たず、その5´上流および3´下流には、これまでに薬理学的・細胞生物学的に示唆されていたMSHリセプターに関する緒知見を裏付けるいくつかの遺伝子発現調節エレメントが観察された。また、興味深いことにこのリセプターは、ホルモン非依存的活性を示す可能性が示唆された。このことは、鳥類において、下垂体中葉が退化した理由を考える上で有用な知見を与えてくれるものと考えられる。
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