アメリカザリガニの視細胞感桿において分子量44kDaのアクチン様蛋白質が視物質ロドプシンと相互作用していることを見出していた。今年度はこの相互作用の生体内での役割を調べる目的で、この相互作用に対する生理活性物質、光の影響を試験館内で調べた。アクチン様蛋白質・ロドプシンの相互作用は、ATP・ADPによって切断される。ATPは数マイクロモル程度で十分な効果が見いだせたが、ADPは相互作用を切断するためには100マイクロモル以上の濃度が必要であった。加水分解されないATPアナログであるATPγSでもATP同様の効果が見出された。AMP・cAMPは効果がなかった。ATPとは対照的にGTPはまったく効果がない。カルシウムイオン・光も効果がなかった。これらの結果は、アクチン様蛋白質とロドプシンとの相互作用が、ATPによって調節されている可能性を示している。 アクチン様蛋白質とロドプシンとの相互作用が、光情報交換機構におけるロドプシンによるG蛋白質の活性化に与える影響を調べる過程で、Gq型G蛋白質(Gq)が光によって視細胞内を移動することを見出した。即ち、暗順応下において、Gqは感桿膜に膜結合型として存在する。しかし、明順応下、Gqがロドプシンにより活性化されると、Gqは水溶性になり感桿から細胞質内へと移動する。明暗順応によってロドプシン量に変化がない。すなわち、暗順応条件下においては、光受容したロドプシンが多くのGqを活性化でき、明順応かではそのGqの数が少なくなる。すなわち、このGqの視細胞内移動は視細胞の明・暗順応にともなう光感度調節に関与していると考えられる。このGqの視細胞内移動は細胞骨格関連蛋白質により引き起こされている可能性も考えられる。
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