本年度は次の2点について研究成果が得られた。 1)SP-22の生化学的機能の検索 SP-22のアミノ酸配列のホモロジー検索により、いくつかの類似タンパクがわかっているが、これらのうち生化学的機能がわかっているものとして、SalmonellaのAlkyl hydroperoxide reductaseおよび酵母のThioredoxin reductase(Thiol specific antioxidant)がある。このふたつのタンパクはいずれも、活性酸素を消去する活性をもっている。そこで、SP-22にも同様の活性があるかどうか検討した。方法は、活性酸素に対して極めて感受性が高いトリプトファン水酸化酵素の失活を抑える活性として測定した。その結果、精製SP-22はほとんど活性をもたなかったが、血清を加えると強い活性が出現した。この活性がトリプトファン水酸化酵素に対する直接作用ではないことは、SP-22は血清存在下に、活性酸素によるヘモグロビンの酸化阻止活性、グルタミン合成酵素の失活阻止活性をもっていることから明らかである。血清中の有効成分は、高分子量であり、熱不安定性であるので、タンパク質であると思われる。活性酸素の発生系としては、ジチオスレイトール-Fe^<2+>を用いたが、ジチオスレイトールのかわりにアスコルビン酸を用いると血清存在下でも活性は検出されなかった。SP-22は酸化還元酵素と考えられるので、このことはジチオスレイトールが活性酸素発生系としてだけでなく、SP-22の還元系としても機能していることを示唆している。 2)SP-22遺伝子の解析 われわれはすでにSP-22のcDNAをクローニングしているが、これをプローブとして、ヒトgenomic libraryをスクリーニングし、SP-22遺伝子のクローンを3つ単離した。これらについて現在解析中であるが、PCRによる解析から、SP-22遺伝子は、複数のエクソンから成っていることがわかった。
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