本研究における最初の目的である良好な光学顕微鏡用のトビムシ類の胚発生の初期の卵の切片を作成するために、電子顕微鏡の標本作製に準じた固定方法(パラフォルムアルデヒド、グルタールアルデヒドなど)を採用した。トビムシ類の卵の固定には一部に問題(卵の変形など)を生じたが、全体としては良好なものであった。固定の後に回転型微量撹拌装置(ロ-テーター)を用いて、樹脂包埋を行った。包埋後にガラスナイフにより準薄切片を作成した。 トビムシ類の初期発生は他の昆虫類のそれ(表割)とは異なり、全割である。産卵直後の卵はすでに精子は卵内に侵入しているものの減数分裂の第2分裂の途中である。減数分裂の終了後すぐに卵の第1分裂が始まる。第4分裂までは分裂の同調性は保たれるが、後には失われる。割球は卵黄の部分を切り離しながら表層に移動する。卵割の最後のステージには細胞質と核だけで細胞を構成するようになり、卵の表層に位置し、胚盤葉期に移行する。初期発生の準薄切片を詳細に観察・検討したところ、初期発生においては、細胞の分裂軸・分裂の同調性などに従来の報告に対する異論あるいは新解釈の可能性等が認められている。また胚盤葉の形成時にほぼ同時に形成される、始原生殖細胞、卵黄細胞(一次および2次)が初期発生のどの細胞(割球)に起源しているか、どのように形成されるかなどに関しても新しい結論・解釈の可能性が生じてきた。このようにして得られた結果を現在詳細に検討中である。検討終了後に論文を執筆する予定である。
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