研究概要 |
ヒルギ科構成属、およびその近縁群と考えられているAnisophyllea科、フトモモ科、ホルトノキ科構成属のDNAを抽出し、葉緑体DNA上のrbcL遺伝子の塩基配列約1300bpを解析した。材料に用いたのはヒルギ科構成属の9属(Rhizophora,Bruguiera,Kandelia,Ceriops,Carallia,Gynotroches,Pellacalyx,Crossostylis,Cassipourea)、Anisophylleaceaeから2属(AnisophylleaとCombretocarpus)、フトモモ科から2属(SyzygiumとEugenia)、ホルトキノ科から1属(Elaeocarpus)である。解析した結果をもとに最節約法、近隣結合法で系統樹を作製した。 その結果、次の事項が明らかになった:1.ヒルギ科は単系統群である。2.Anisophyllea科はフトモモ科よりもヒルギ科から離れており、広義のヒルギ科(Anisophylleaceaeもヒルギ科に含める見解)は支持されない。3.マングローブ生の4属(Rhizophora,Bruguiera,Kandelia and Ceriops)は単系統群である。4.tribe Gynotrocheae(Gynotroches,Pellacalyx,Carallia,Crossostylis)は側系統群になり支持されない5.tribe GynotrocheaeとRhizophoreaeの構成属(Rhizophora,Bruguiera,Kandelia,Ceriops)は単系統である。 系統樹への形質再配置から市議の事項が考察された:1.ヒルギ科植物のマングローブへの進出は1回だけ起こったことで、この際に種子の胎生発芽と耐塩性の特徴を獲得した。2.stiltタイプの気根の獲得は内陸生の段階で獲得したもので、マングローブ生への移行に伴う獲得形質ではない。3.雄蘂の多数化と雌蘂の多心皮化は複数の分類群で平行して起こっている。4.ヒルギ科全体としては子房上位→子房半下位→子房下位の進化が起こっている。但し、GynotrochesとRhizophoraで平行して逆方向への変化が起こっている。ヒルギ科としての共有派生形質は子房壁の樹脂含有細胞層と托葉内部の粘液腺(colletor)が該当する。しかし、これを言い切るためには、本研究の対象以外の分類群の系統上の位置が確固たるものになることが必要である。
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