今年度は北海道産ホシクサ属植物の分類学的研究を目的として、道内各地より採集された資料および北海道大学、東京大学に収蔵される本属植物のタイプ標本を含む、さく葉標本も加え、比較形態観察をおこなった。その結果、これまで北海道より記録されているコイヌノヒゲ、ヒロハイヌノヒゲ、エゾホシクサ、エゾイヌノヒゲ、カラフトホシクサ、シロエゾホシクサ、クシロホシクサ、ネムロホシクサ、ニッポンイヌノヒゲの北海道固有種6種を含む9種を確認した。また北海道よりこれまで記録されていないミヤマヒナホシクサの生育も確認した。これらの各種の分類形質である花形態について詳細に観察比較し、各種の形態的特性および形質の変異性について検討した。 その結果、これまで識別形質として扱われていた花床、雌花萼および花弁の毛の有無は変異性が激しく、各種を識別する形質としては用いられないことが明らかになった。また、子房数および雌花萼片数においても集団内での変異があること、また子房および萼片の数以外では形態的差異が見いだせられないことが明らかになった。これらのことから北海道産ホシクサ属植物は固有種6種のうち3種を除く種が本州産種に含まれるものであることが明らかになった。それらの分類学的扱いを下記に示す。 Eriocaulon atrum Nakai クロイヌノヒゲ E.glaberrimum Satake ネムロホシクサ E.decemflorum Maxim. コイヌノヒゲ E.hondoense Satake ニッポンイヌノヒゲ E.miquelianum Koernicke イヌノヒゲ E.monococcon Nakai エゾホシクサ E.nanellum ohwi ミヤマヒナホシクサ E.pallescens(Nakai)Satake シロエゾイヌノヒゲ 北海道固有 E.perplexum Satake et Hara エゾイヌノヒゲ 北海道固有 E.robstius(Maxim.)Makino ヒロハイヌノヒゲ E.sachalinense Miyabe et Nakai カラフロホシクサ 北海道固有 E.kushiroense Satake クシロホシクサ
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