当博物館周辺及び、長野県八ヶ岳において、マキノゴケ、ミズゼニゴケ、コモチフタマタゴケ、クシノハスジゴケ、ヒロハスジゴケ、モモミジスジゴケ、コモチミドリゼニゴケなどを採集し、これまで、培養しているヌエゴケ、ミヤケテングサゴケ、キテングサゴケ、ナミガタスジゴケとともに順化させたのち、培養し、配偶体の形態形成過程を実験、観察した。 培養は、当館所蔵の人工気象器内によって、温度20℃、湿度100%、明暗周期12時間で順化させ、胞子及び、無性芽を採取り、無菌処理をしたのち、同条件下において1/2希釈クノップ培養液で行った。 培養中、発芽した胞子及び無性芽次を次の各段階において、(1)糸状から葉状にいたる過程、(2)葉状から配偶体本体にいたる過程とにおいて、固定、樹脂胞埋、染色し、顕微鏡観察した。 得られた成果の中では、スジゴケ科の種において、糸状の原糸体期において、先端以外の細胞の油体が消失し、細胞が再び分裂能を有する現象が確認された。この現象は、これまで、苔類では知られていない現象であり、蘚類の原糸体との関連をうかがわせる発見として、苔類の系統を論じる上で重要な意味を持つと思われる。また、配偶体本体において、すべての細胞に油体を持っている種においては、原糸体においても全細胞に油体を持つが、配偶体本体で油体細胞とその他の細胞の分化を有する種については、原糸体の初期には、油体が観察されなかった。現在、これらの結果を追加確認している最中であり、結果を論文としてまとめつつある。
|