研究概要 |
本研究の目的は色素分子の光学過程において局所場の果たす役割を検討することである。試料として、分子内に強い局所場が存在すると期待されるバクテリオロドプシンを用いる予定であったが、分子内色素の置換が進展しなかった。そこでより単純な系として、ヘミシアニン色素の二次元結晶(H会合体)を採りあげ局所場の効果を調べた(Uiet al.,J.Chem.Phys.101,6430-6438,1994)。H会合体では色素分子の遷移モーメントが結晶平面にほぼ垂直に同じ向きを向いて並んでいるため、吸収ピークの波長は溶液試料と比べて短波長側にシフトしている。本H会合体ではこのブルーシフトは4200cm^<-1>もあり、分子相互作用が強いことを示唆しているが、本研究により局所場近似が有効であることが証明された。即ち、色素レーザを用いて第二高調波発生強度(SH強度)の波長分散を測定したところ、第二高調波の波長での吸収の波長分散と相同の分散が得られ、局所場近似の予測と一致した。さらに、モノマー状態の試料でも同様の測定を行い、"√<SH強度>/吸収"の比の値はH会合体とモノマー状態でほぼ一致し、局所場近似の予測と一致した。
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