研究概要 |
CuCl_2水溶液に健常者および脳血管型老人性痴呆症患者の血液を添加し、CuCl_2水和物の樹枝状結晶を成長させた。 健常者の血液を添加して成長させた結晶は、無添加で成長させた結晶と比較して水和数が多い結晶の含まれることが我々の研究により既に明らかとなっていた。そこで、血液を無添加および添加した溶液中から成長させた結晶に関して、それぞれ単結晶X線構造解析を行った。前者の結晶系は、斜方晶系(Pmna)、格子定数はa=8.0868(7)A,b=3.7444(5)A,c=7.4122(7)Aであった。後者に関しては、水分子由来の酸素の熱振動が前者のそれより異方性が激しいものの、格子定数に有意差が認められず、過剰な結晶水はアモルファス的に配置していることも考えらた。詳細は解析中である。 Arレーザー(488nm)を光源に健常者、脳血管型老人性痴呆症患者の血清のレーザー・ラマンスペクトルの測定を行ったことろ1500cm-1及び1150cm-1付近に極大が観測された。Larssonらによると、健常者のスペクトルと比較して、肝炎患者のそれは強い蛍光を発すると報告しているが、脳血管型老人性痴呆症患者の場合は、強い蛍光のバックグラウンドは観測されなかった。一方、血液を添加して成長させた結晶と無添加の結晶では異なったスペクトルが得られた。結晶の異方性があるため、慎重な解析を必要とするが、疾病と関連のある血液成分が結晶面に選択的に結合し血清の状態では検出されない差を増幅して検出している可能性もある。 Cuの周りの対象性をみるために、電子スピン共鳴(ESR)の測定を試みた。樹枝状結晶の粉末で測定を行ったところ、異方性が大きく測定の再現性に乏しいため、磁場⊥c軸で単結晶での測定を行った。その結果、無添加の結晶と健常者の血液を添加した溶液から成長させた結晶では異なったスペクトルを与えた。前者のg値は2.193であり、後者は2.165であった。後者には2.105にショルダーピークが認められた。このショルダーピークは角度依存性を示したことから血液の成分はある結晶面と作用していることが示唆された。
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