研究概要 |
シンクロトロン放射と微小角X線定在波法を組み合わて、As/Si(100)のAs原子の構造を精密解析した。結晶学的な(100)面から[011]軸の周りに4°をなす.微小傾斜表面を清浄後、基板表面(温度650℃)に分子線束エピタキシ-装置でAs原子をモル-ヤ蒸着して試料を作った。高速電子線回折および低速電子線回折により表面が1×2,2×1のダブル・ドメイン構造から成ることを確認した。その後超高真空を保持したまま、その試料を高エネルギー物理学研究所・放射光実験施設に運び、シンクロトロン放射による微小角X線定在波実験を行なった。全放射臨界角φ_C(1.8mrad)近傍に視射角φ_Dを固定してX線を入射させ、同時に表面に垂直な(022)面のブラッグ角をはさんでブラッグ角からのはずれ角をスキャンして、吸着原子からのAsK蛍光をゲルマニウム検出器で測定した。さらに表面法線周りにほぼ90°試料を回転し表面と86°をなす(022)面を用いて同様の測定を行なった。上述の測定ではφ_C付近および前後の角度にφ_Dを固定した。Asダイマー位置の対称性を考慮した新しいデータ解析方法を提案した。表面のステップエッジ([011]と平行)と平行にAs-Asボンドをもつドメインを2×1と呼び、ステップエッジに垂直なAs-Asボンドをもつドメインを1×2と定義する。得られた結果は、各ドメインの面積比2×1ドメイン:1×2ドメイン=38%:62%,ドメイン内のコレーレント率〜1,As原子の下地シリコンの(022)面間の位置として0,0.336,0.664である(As-Asボンド長2.55Å)。これらのうちの前2者のドメイン比率およびコヒーレント率は、微小角X線定在波法による新しい知見である。
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