研究概要 |
非晶質半導体と絶縁膜の界面はThin Film Transistor(TFT)への応用上非常に重要である。本研究はその界面欠陥密度の測定を光熱偏向(PD)分光法を用いて行ったものである。従来から絶縁層としてはa-SiO_2よりもa-SiN_<1.7>の方がTFT特性が優れていることが経験的に指摘されていたが、その原因についてはほとんど知られていなかった。その原因を追究すべくa-SiO_2/a-Si:H界面とa-SiN_<1.7>/a-Si:H界面の光吸収の測定を行った。その結果a-SiO_2/a-Si:H界面はa-SiN_<1.7>/a-Si:H界面に比べ界面準位が大きいことが判明した。この結果はTFTの動作特性の結果と矛盾しない。そこでさらにこの原因が何に起因しているものかを明らかにするため様々な試料を用意した。そして界面準位が膜の堆積順序に依存する事が明らかになった。筆者はこの堆積順序依存性から界面準位の形成に原料ガスのプラズマが関与しているのではないかと考えた。そこでa-Si:Hの表面にNH_3,N_2O,H_2ガスのプラズマ放電処理を行った。その結果N_2Oガスのプラズマがa-Si:H表面の欠陥密度を増大させる効果があることが明らかになった。これらの結果からa-Si:Hと絶縁膜の界面準位は膜の物性定数の違いが与える影響よりも、a-Si:H上における絶縁膜の初期成長過程が重要であることを示唆した。換言すれば良質なTFTを作製するためには膜の初期成長課程を解明する必要があることがこの研究によって初めて明らかになった。この結果はすでに1994年秋の応用物理学会で報告し1995年春の応用物理学会で続報を行う予定である。
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