研究概要 |
1.本研究の目的である周辺刺激の影響を取り入れた色空間の開発に先立って、異なる周辺光の下での色知覚特性を調べるため、コンピュータ・グラフィックスを用いた任意色刺激提示システムを開発した。2.このシステムを用いて異なる周辺光の下でのカラーマッチングの実験を行った。テスト刺激としては中心光に色度座標がχ=0.42,y=0.38の刺激、周辺光にはD_<65>白色を用いた。この刺激は周辺光が暗く中心光が明るい場合はオレンジ色に知覚され、周辺光が明るく中心光が暗い場合は茶色に知覚される。周辺光と中心光の輝度の組み合わせは8通り設定した。マッチング刺激はテスト刺激と同じ大きさの周辺および中心光をもちテスト刺激に併置されている。周辺光には同じくD_<65>白色を用いた。設定されたテスト刺激に対して、マッチング刺激の周辺輝度を変えながら、中心光の色度座標および輝度を被験者が自由にコントロールしてテスト刺激の中心光の色にマッチングする。3.上記の実験の結果、知覚色を一定に保つための周辺光の輝度L_Sと中心光の輝度L_Cの間にはL_C=L_O+CL^β_Sという実験式が成り立つことがわかった。ここで、L_OとCは知覚色によって一意的に定まるパラメータ、βは普遍的なパラメータでβ=0.65となった。また、周辺光の強度が高くなり中心光に黒みが誘導されるようになると周辺光が弱いときに観察されていた白みがなくなる一方色みは残るので相対的に色みの強さが増大するという現象も中心光の刺激純度の変化から明らかになった。4.以上の実験結果から周辺刺激を考慮した色空間を導くためには、周辺光の輝度、中心光の輝度および色度座標という4変数から、色度座標の補正量と明るさや黒みを決めるパラメータCという3変数を導く式を導出するればよい。補正された色度座標とCにより知覚色を一意的に表現することが可能になる。この式の導出は今後の課題である。
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