本研究の目的は、効率や寿命、振動系設計の複雑さのような従来の超音波モータの欠点を根本的に解決するために、研究代表者が提案する電気粘性流体を利用した新しい超音波モータの基礎的な特性を調べ、設計法について検討することであった。本モータでは従来の超音波モータにおける振動による摩擦力制御にかわって、印加電界によって粘性が変化する流体(電気粘性流体、ERF)をロータ・ステ-タ駆動面に導入しており、従来のようにロータとステ-タが直接接触しないので、効率や寿命を改善できる可能性がある。また、振動成分は駆動力源となるもの単一でよく、振動系の設計の自由度が増大する。 ERFによる「ねじり振動-ロータ回転」変換機構の基礎的性質を検討するため、電磁式ねじり振動子とロータ、ERFからなるモータを試作して、その特性を測定し、以下のような結果を得た。 1)ねじり振動をロータ回転に変換することに成功した 2)ねじり振動とERF印加交番電界の位相差を変化することで回転方向を制御可能である 3)ねじり振動速度の5割程度のロータ回転速度が実現できた さらに、本モータの最適な動作点を検討するために、電気等価回路モデルによる数値解析を行った。その結果、 1)駆動周波数が高いほどすぐれた特性が得られる 2)理想的にはねじり振動速度と同程度のロータ回転速度が得られるはずである 3)以上を実現するためには高速なERFの開発が必要である 4)既存のERFで従来の電磁型モータと同程度の出力トルクが得られるはずである ことなどが明らかになった。
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