研究概要 |
複合材料のマトリックス中に生じる損傷や繊維破断の発生様相は複雑であり,損傷力学的に取り扱う場合に,そのメカニズムを考慮することは非常に難しい.本研究ではFRPのマトリックス割れ,繊維破断に注目してその損傷のフラクタル性を検証し,フラクタル損傷力学構築のための知見を得ることを目的としている.マトリックス割れに関しては,その場観察によってフラクタル次元1.6のフラクタル分布であること,繊維破断に関しては破断箇所のフラクタル性が認められることを実験的に示した.フラクタル分布の性質を用いることによって,繰り込みが可能となり,き裂密度の繰り込みを行うことで実際の剛性低下に近い損傷が評価できることを示した.また,CFRPの疲労破壊に関して,繊維破断箇所の繰り込みを行うことによって,疲労発生の限界荷重が引張強度の約70%であることが明らかになった.フラクタル損傷モデルは,複合材料の損傷評価に有効であるが,解析的に検討するためには計算機の能力が不足がちであることが明らかになった.
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