研究概要 |
心臓壁は心筋線維とその間隙に存在する組織液,それに壁内に分布する血管とその中を流れる血液,結合組織等からなっている.これらの要素は固体要素と液体要素に分けることができる.心筋内圧は上述の心筋線維の間隙にある組織液の圧力と考えられる.本研究で購入した米国IPM社製サーボヌリング・プレッシャーシステムモデル5Aでは先端の内径が数ミクロンのガラス製マイクロピペットを使用するため,実際に測定できる液体の領域の大きさはピペット先端に比べてある程度大きくなければならない.本研究では生体軟組織を用いる前に,固液二相体内部における液体成分の圧力の基本的な傾向を調べることとして,他の物質を用いて検討した. まずピペット内部を満たす食塩水の濃度についてはこれまで水1リットルあたり1モルから2モルの食塩が必要であるとされていたが,本研究で種々の濃度で上記装置の応答性を検討した結果,生理食塩水中での使用に対して0.5モルでも適切な応答が得られることがわかった.次に果実の多数の粒を利用して,シリンジ内に固液二相状態を作り出し,一方から生理食塩水によって一定圧力を加えて,他方はフィルターをとりつけて,シリンジ内部の上流からの距離の異なる2点で圧力測定を行った.これは心臓壁内の血管とその周辺組織に対して,血管から周辺組織への液体の移動に際しての圧力分布を模擬的に調べるためのものである.その結果,上流の圧力の大きさによらず,2点間の流体圧力の比は常に一定であることがわかった.血管から浸透によって組織に液体が移動する際には,この実験で得られたのと同様な現象が見られると推測される.
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