本研究では、流れ場の領域最適化に対して、汎用有限要素解析プログラム利用した実用的なシステムの開発を行い、解析結果を通じてその有効性を確認した。取り上げられた二つの問題は、定常粘性内部流れ場問題における散逸エネルギー最小化と、ポテンシャル流れ場領域内の部分領域において流速値を規定する流速誤差最小化の問題である。粘性流れ問題では、基本的なストークス流れ問題に対してのみ検討を行った。 1.粘性内部流れ場の最適化は、流れ場解析と形状修正解析の二つの解析を、有限要素法を用いて繰り返すことによって達成できる。流れ場解析では流速分布から計算された領域変動の感度となる形状勾配関数(ストークス流れの場合は散逸エネルギー密度と等価)の分布が出力される。形状修正解析では、流れ場領域を線形弾性体と仮定し、設計境界にその形状勾配関数の大きさに比例した表面力を作用させたときの弾性変形量が、形状修正量と見做して出力される。流れ場解析では通常の流れ場解析ソフトが利用され、形状修正解析では構造解析の線形解析ソフトが利用された。開発したシステムの有効性は、曲がり管などの2次元の解析例を通じて確認した。 2.ポテンシャル流れ場の最適化では、ポテンシャル場のアナロジー関係に基づいて、流れ場の解析には構造解析の汎用ソフトに通常備えられている定常熱導電場解析コードを利用して、形状勾配関数を評価した。また形状修正解析では、熱導電場解析によって評価された形状勾配関数を用いて、上の解析法と同様な手法により形状修正量を計算した。有効性は、簡単な直管、ノズルなどの問題と、ベルヌ-イ定理を応用して流速値規定を圧力値規定に置き換えた一様流中の翼形状決定の2次元問題によって確認された。
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