超伝導マグネットを利用した強磁場利用機器には、強大な電磁力が作用しており、この電磁力が構造材に及ぼす影響の力学的挙動の解明が注目されている。また、強磁場利用機器は、極低温下で使用される場合が多く、極低温下での構成材料の性質の変化についても注目されている。超伝導コイルを構成する超伝導導体は複数材料の複合構造をしており、導体間の絶縁材は主にガラス繊維強化複合材が使用される。超伝導コイルはこれらの複合部材どうしが組み合わされたものであり、その力学的挙動の評価は単一材料の構造物に比べて容易ではなく、複合則による等価剛性だけでは、定量的な評価が難しくなっている。超伝導コイルの強度を評価するには、構成する部材使用温度における機械的な物性値、超伝導体単一の機械的強度、絶縁物の機械的な物性値およびコイル構造を考慮した剛性、電磁力の大きさと方向をすべて知る必要がある。本研究では、このような超伝導導体と絶縁物の極低温下での力学的挙動を明らかにすることであり、実際の超伝導導体と絶縁物を用意し、極低温下で圧縮試験を行った。絶縁物は板厚方向の絶縁物単体での剛性が未知であること、実際のコイルには絶縁物が接着などにより接合することから、超伝導導体に絶縁物を張り付けたものに対して導体単体と同様の圧縮および曲げ試験を実施した。実験は常温で実施し、試験方法の妥当性と常温での挙動を確認した。実験によって得られたデータから、超伝導導体、絶縁物の剛性を算出し、解析結果との比較を行った。解析は異方性を考慮した有限要素法によって行い、複合超伝導導体の機械的な負荷による剛性、強度を実験と照らし合わせ、定量的に評価した。今後、液体ヘリウム温度での試験を進め、極低温下での挙動を評価する。また、電磁力が負荷した場合の挙動についての計算を行うプログラムを開発中である。実際の超伝導コイルの健全性評価には電磁力を考慮した評価法を詳細に検討する。
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