以前の研究より、ダイヤモンド表面をナノスケールで見ると、(111)面を表面とする微細構造を持つことがわかっている。そこで、今回は(111)面を表面に持つビッカース型のダイヤモンド圧子の原子モデルを用い、その形状および強度について解析を行なった。解析はTersoffポテンシャルを用いた分子動力学法により行なった。 まず、ダイヤモンドの温度300[K]に固定し、緩和を行なった。その結果、ダイヤモンド表面の原子は再構成せず、(111)面のままであり、鋭い先端を保つことがわかった。また、表面張力によりダイヤモンド表面は凹面に反り、先端がわずかに鋭くなった。これより、ナノスケールで見たダイヤモンドは非常に鋭い先端を持つことがわかった。 次にこのダイヤモンド圧子を用い、シリコンのナノスケールインデンテーション、および、単粒加工を行ないその強度について調べた。インデンテーションでは、ダイヤモンド結晶中には50[GPa]を越える大きな圧縮応力が生じたが、大きな引張応力は存在せず、ダイヤモンドの変形は弾性変形のみであった。さらに、ダイヤモンド圧子をシリコン譚結晶に押し込んだ後、圧子を横に動かし、単粒加工を行なった。このとき、100[GPa]を越える引張応力が存在したが、クラックが生じたり、原子が離脱するというようなことは起こらず、圧子は鋭い先端を保ったままであった。以上のことから、ダイヤモンドをナノスケールで見た場合、非常に鋭く強い先端を持つことがわかった。
|