研究概要 |
冗長自由度を有する機構を用い,超精密かつ高速な位置決めシステムを実現することを目的に,下記のことを行った.なお購入した解析用コンピュータは,実験データの解析等に使用した. 1.最適制御理論の適用 本研究の対象となる冗長自由度を有する機構は,粗動機構と微動機構から構成され,本質的に多入力多出力系である.したがって,冗長自由度を有するという利点を生かすためには,従来のようなPID制御系ではなく,状態フィードバック制御系を構成すべきであると考え,本年度は,最適制御理論に基づく1型のサーボ系を構成し,粗動機構,微動機構の制御系を,1個の最適制御系により位置制御を行った. 2.送りねじと圧電素子を用いた位置決めシステムの試作 電磁モータ,ボールねじを駆動機構とする粗動機構と,圧電素子と弾性ヒンジ機構からなる微動機構よりなる位置決めシステムを試作した. 3.機構のモデル化と動的パラメータ同定 試作したシステムには,機構の摩擦,アクチュエータの飽和等の非線形特性を有するが,本年は,機構を簡単な線形モデルで近似し,最適制御系設計に使用した.数種の動的パラメータは,モデルと機構の動特性の測定結果を利用して同定した. 4.試作機構の超精密位置決め実験 最適制御系を設計し,試作機構の超精密位置決め実験を行った.粗微動機構を同時に駆動する効果を調べるために,立ち上がりがほぼ等しい粗動機構のみの位置制御実験も行った.その結果,粗動機構と微動機構を同時に駆動することにより,オーバーシュートのない高精度な位置決めが実現できることを確認した.ただし本年はアクチュエータの飽和の影響を受けないようにコントローラを設計したため,位置決め時間がやや長く,今後改善する必要がある.
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