今年度は、数値実験により有効な制御方法の調査・研究を行った。幾つかの知見を得たので以下にまとめる。 (1)カオスの制御法の一つとしてオット、グレボジ、ヨ-クが考案した方法(OGY法)がある。熱対流でこの方法を使う場合、システムの状態量をどのように得るかが課題となる。そこで、まず数値計算によって制御可能な対流セルの条件を見いだし、状態量として何を使うのが適当かを調べた。その結果、熱対流場全体を幾つかのブロックに分けそれぞれの温度をニューラルネットワークにより学習させて対流モードに対応したスカラー量を出力させて状態量とするのがもっとも効果的であることが分かった。 (2)上記の状態量推定法と簡単なON-OFF制御により、多重解の存在する対流場のモードスウィッチング制御を試み、任意安定モードへの制御が可能であることを示した。 (3)次に、安定な解が存在しないレイリー数において所定の解を安定化することを試みた。その際、まず対流場の制御入力に対する応答を詳細に調べる必要がある。本年度補助金で購入したファジイ制御用コンピュータにより効率的な数値実験が行え、有効な制御法が見いだせた。 (4)本年度の研究ではOGY制御法を流れの制御に適用するには至らなかったが、ニューロネットを改良し不安定な鞍点付近での状態推定能力を高め、ファジイ制御等を用いれば、よりカオス的な流れ場の制御も可能であるとの知見を得た。
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