ミクロスケールの希薄流れにおける数値解析手法について基礎的に検討するため、まず、研究代表者が従来から用いている計算コードの汎用性を高め、様々の形状のすき間流れを計算できるコードを開発した。 次に最も基本的な流れ場として、平行平板間を入り口/出口の圧力差によって気体が流れる流れ場を解析した。このとき入り口/出口での主流速度が不明であり、また粘性により速度分布が生じるため、この境界条件の与え方が問題となる。今回は、池川らのモデルと、主流速度を0とした場合とを計算し比較した。池川のモデルでの流入速度は変動が著しく大きく、あまり適当ではないことがわかった。また2つの境界条件で、流路中央付近の圧力勾配、流量については両者に差は見られなかった。また、この流れ場において計算セルのサイズやセルあたりの模擬分子の個数を変化させ、流量係数を比較した。その結果10〜20程度の模擬分子がセルにあれば流量係数は信頼できることがわかった。これは一般の希薄流の場合と同じ程度の個数である。 引き続いて、ハードディスクのディスクとヘッドの間の流れを模した流れを解析した。この場合も、各種の平均値がほぼ一定値となるための計算条件は従来の程度で十分であることが確認できた。 上のいずれの流れ場においても、本来Boltzmann分布になるはずの速度分布に若干の歪みがみられた。この歪みはランダム的なものではあるが、理論解と比較して議論するためには精度が不足である。平均値に関しては模擬分子個数の影響は出てこないにもかかわらず、速度分布関数に関してはまだまだ精度が不足な場合があることがわかった。なお、分子間衝突モデルはVSSモデルと剛体球モデルとで顕著な差は見られなかった。DSMC法を用いてミクロ流れにおいて信頼の高い計算を行うためには、分子個数、乱数発生法、衝突処理等について、さらに検討を要すると考えられる。
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