研究概要 |
本研究では,ダクトの壁面に設けたスリット(ダクト軸方向長さが極めて短い断面膨張部)の消音効果(共鳴形消音器と同様の特性を示す)を,ダクト内に流れがある場合について実験的に検証した. 1.実験装置の製作および検証:(1),直径の等しい2本のダクトの端部におのおのフランジを取り付け,これらのフランジ間に任意の穴径を持つリングを挟み込んでスリットを形成した.(2),入射側ダクトにスピーカ,透過側ダクトにマイクロホンを取り付けた.(3),ダクト下流端に送風機を取り付けることにって,流れを発生させた.(4),絞り機構を用いた流速測定装置をJISに従って製作し,ダクト上流側に取り付けた.(5),流れに起因する音の影響を防ぐために,受信者をバンドパスフィルタで処理した.また,本研究でのダクト内平均流速最大値を4m/sとした.(6),流れを妨げることなくダクト端部での音の反射を防ぐために,ダクト壁面との接触部に溝を持つ円錐形吸音材を製作し,これをダクト端部に挿入した. 2.スリットでの透過率の測定:単一周波数の単一モード波に対する,スリットでの透過率を測定した.ダクト内流れがない場合と,平均流速2m/sおよび4m/sの流れがある場合とを比較した.スリットへの入射音波は,平面波および(1,1)モード波とした。種々の直径のスリットについて,透過率が減少する周波数付近で周波数を変化させながら測定を行った.測定結果から,流れがある場合とない場合とで,スリットでの透過特性にほとんど差異が生じないことが分かった.すなわち,流れがある場合にもスリットが消音器として有効であることが確認できた.
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