研究概要 |
速度の異なる2流体がしきり板を介して混合する混合層について,数値粘性を加えない4次精度の中心差分を用いた直接シミュレーションを行い,以下の結論を得た. (1)速度比が0.7の場合について得られるシミュレーション結果より,混合層の初期生成領域では,運動量ならびにスカラー量の輸送が抑制される.特に,運動量の場合は抑制効果が大きく,逆勾配拡散現象が観測される.これらの特異な輸送現象が生じる原因について,運動量ならびにスカラー量の輸送を表わすu′v′ならびにv′c′の輸送方程式の各項の大きさと渦運動の相互作用について考察した.その結果,混合層初期生成領域においては,渦間の間隔が狭く,渦相互の干渉する効果により,渦の間に2次流れが生成され,主流と直角方向の速度変動が大きなものになること,その効果により,勾配拡散を駆動する生成項の大きさより,逆勾配拡散を駆動する速度圧力勾配相関項の大きさが卓越し,これにより運動量ならびにスカラー量の輸送が抑制されていることが明らかになった. (2)混合層の下流領域では,渦の合体が観測される.混合層の発達には,渦の合体が大きな役目を果たしていることが従来より指摘されているが,渦の合体時にどのような運動量輸送が行われるか明確ではなかった.直接シミュレーションから得られるデータベースを用いて,その現象について考察を行った.その結果,渦の合体時には,瞬時の速度変動のu′v′の負の領域,すなわち勾配拡散を駆動する領域が合体し,大きな負の領域が形成され,これにより運動量の勾配拡散が駆動されること,また,その後,u′v′の正の領域が生成され,逆勾配拡散が生じることが明らかになった. さらにスカラー量の輸送についても考察を行い,スカラー量の輸送をあらわすu′c′は,渦合体挙動の初期には勾配拡散が駆動され,さらに合体が進むと逆勾配拡散が駆動される特徴的な輸送機構が生じていることが明確になった.
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