研究概要 |
本研究では電気抵抗の温度依存性を利用し、Lock-in計測法により、同一装置による高精度な温度、熱伝導率の測定を行い、その測定精度、適応限界を明らかにした。 本測定法では、Wheat-Stone Bridgeの一つの抵抗に温度依存性の高い抵抗体(金属細線,薄膜)を用い、計測プローブとし、Lock-inアンプから角周波数ωの交流電圧を印加する。抵抗では直流成分と2ωの周波数を持つ発熱が起こり、直流分と2ωの周波数成分を持つ温度上昇が起こり、抵抗も変化する。この結果、ブリッジの出力電圧は、1ω成分と3ω成分を持ち、加熱量を十分小さく取ることで、1ω成分からプローブ近傍の温度が、また、3ω成分から2ωの温度変動成分が得られ、変動温度から周囲物質の熱伝導率が求められる。 温度測定は水中におかれたニクロム線周りの自然対流の可視化を直径10μmの白金細線プローブで行い、比較的高精度の温度測定が可能なサーミスターでの測定結果と比較した。両者の測定結果はよく一致しており、本測定法では、白金プローブにおいて0.02℃の精度で温度計測が可能であることが分かった。 変動温度の実験は、直径10μmの白金細線、タングステン細線を用い、空気、水、エポキシ樹脂中で、また、ガラス基板上に蒸着されたITO薄膜を用い空気中で行った。プローブ周りの対流の効果を考慮しない熱伝導モデルと測定結果を比較し、両者は空気中では大きくずれ、水中及び固体中では印加電圧周波数320Hz以下でモデルとよく一致することが分かった。薄膜の場合にも、ガラス基板の熱伝導が気体側の熱伝達に比べ支配的なため、基板側熱伝導の解と周波数320Hz以下の範囲で良好な一致を見せた。また、変動温度測定から周囲液体の熱伝導率を求め、混合液の濃度計測が可能なことを、水の上にエタノールを静かに注ぎ成層化した混合液の拡散による混合過程を測定することで示した。
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