研究概要 |
本研究では,従来のエバポレータに用いられている偏平冷媒流路をマイクロチャンネル化した場合の蒸発伝熱特性を実験的に調べ,流路の小型化有効性について検討することを目的とした.本年度は,伝熱性能の予測に重要となる流路内の断熱系気液二相流の流動特性を実験的に調査した.実際のコンパクトエバポレータへの応用が可能な範囲で,断面寸法を系統的に縮小させた偏平細管(マイクロチャンネル)を試作し,流路内の窒素-エタノール系気液二相流の流動状況を観察した.試作流路は,流路幅を10mmに固定し,流路間隙を0.2mm,0.5mm,0.7mm,1.2mm,2.0mmの5通りに変化させた.また,エバポレータでは,新型冷媒への転換にともない,液体の物性値が流路内のの流動特性に及ぼす影響も把握しておく必要がある.そこで,エタノール水溶液の濃度を調節して,表面張力および液粘性を変化させ,液物性が気液二相流動特性に及ぼす影響も検討した. 実験の結果,流路内のボイド率分布は液体の表面張力及び粘性の変化に強く影響され,表面張および粘性の減少に伴い,ボイド率は増加することが明らかとなった.流路間隙を狭くするほどボイド率は増加することから,冷媒流路のマイクロチャンネル化に伴い伝熱壁面上の液膜が薄くなり,蒸発伝熱の促進が期待できる可能性があることを見いだした.また,流動抵抗も流路間隙および液物性値の影響を強く受けることが明らかとなった.一般に,液流速が高い場合には,流路内の流動抵抗は液体の粘性が高いほど大きくなるが,液流速の減少に伴い粘性の効果が薄れ,表面張力の影響が顕著になる.こうした傾向は,流路間隙が大きいほど強く現れるようである.さらに,流路間隙を減少させると,マルチネリパラメータで整理した二相流時の摩擦損失倍数が小さくなる傾向が観察された.
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