研究概要 |
生体組織内での熱および物質移動現象には工学的に未解明の問題が数多く残されている。例えば、血流がある場合の生体組織の見掛けの熱伝導率、熱拡散率および物質拡散係数の適切な評価方法を確立することも重要な課題の一つである。15EA02:本研究では、このような生体組織の見掛けの熱伝導率と熱拡散率を同時にかつ非侵襲的に評価するための第一段階として、多孔質層によるモデル実験とそれに対応する三次元の非定常数値解析に基づく見掛けの熱物性値の非接触測定を試みた。すなわち、生体組織の物理モデルとして、上面が厚さ55μmのステンレス薄板、底面と側面が厚さ3mmの透明アクリル板で構成される高さ30mm、幅60mm、長さ200mmの流路内に平均直径1mmあるいは2mmのガラスビーズを充填した多孔質層を作製した。また、組織内での血流を模擬するために、この多孔質層内に平均速度2,5あるいは10m/sで水を流した。流動を伴う多孔質層の見掛けの熱伝導率と熱拡散率の測定には、藤井らによって提案されたレーザ光加熱と赤外線温度計による加熱表面温度の経時変化の測定を組み合わせた非接触測定法を応用した。その結果、見掛けの熱伝導率と熱拡散率は流速の増加とともに増大すること、また加熱部上流側と下流側では、低温流体が流入する上流側の方がこれらの値が大きくなること、さらにビーズ径すなわち多孔質層の空隙率による差異は本実験範囲では見られないことなどが明らかになった。現在、これらの測定結果と従来の生体内熱移動方程式に基づく解析結果との比較を準備中であり、今後、さらに広範囲なパラメータでの実験も計画している。
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