乱流拡散火炎は、工業的に最も多く利用され、熱エネルギーの生産に多大な貢献をしているにもかかわらず、その火炎構造と燃焼工程があまりにも複雑なため、基礎的な立場から明確に理解されていない部分を数多く残している。このため合理的な燃焼法の追求がなされぬまま実用に供されている機器も数多くあり、エネルギー有効利用・環境浄化の点から改善を迫られている。本研究では、円形バ-ナを用い軸対称乱流拡散火炎を炭化水素系燃料により周囲空気流中に形成し、超高速ビデオカメラにより空間火炎混合過程の時間的な変化を可視化し理解することを目的とした。さらに、乱流拡散火炎の階層構造に着目し、その巨視〜微視的な観察スケールでの混合過程とそのつながりを理解することを目的とし、基礎的なデータと新しい知見を報告する。 巨視的観察スケールでは、瞬間火炎発光像より火炎形状を抽出し、幾何学的混合過程を定量解析するためにフラクタル解析および幾何学的固有値の変化より火炎形状の時間的変化を具体的に検討した。局所的観察スケールでは、レーザ・シート法によるラグランジュ的粒子追跡法と瞬間火炎発光像による火炎形状の抽出法の複合計測を行い、乱流拡散混合過程のパターンを周囲空気流と火炎形状の変化より可視化し運動学的観点から定量解析を試み、秩序構造の存在を示唆した。微視的観察スケールでは、周囲空気流中に添加した1粒子をラグランジュ的に追跡し、階層構造の存在を示唆した。 さらに、乱流拡散火炎構造の階層的なつながりの本質を理解するために、微視的火炎構造がどの様に局所さらに巨視的火炎構造に影響を与えているのかを知るために、高速度ビデオシステムを用い従来1点計測で用いた測定体積内をLRSにより空間的に捉え、微視的火炎構造の定量的な解析を行った結果を報告した。実験は、微視的な瞬間2次元温度分布の時系列変化を捉え、1点計測結果と比較することによりその基本的構造の特徴を抽出した。さらに、テクスチュア解析およびテクスチュア勾配解析により空間火炎構造の各領域での特徴を定量解析し、情報エントロピー解析によりその存在確率を求め、空間火炎構造のつながりについて検討した。
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