研究概要 |
まず,実験装置としてL字形の金属製ダクト(断面が一辺200mmx200mmの正方形,入り口からコーナーまで1000mm,コーナーから出口まで2810mm)を試作した.ダクトの入り口に騒音源としてラウドスピーカーを置き,ダクト壁(厚さ10mm)の一部(3カ所)に開口部を設け,そこにステンレス製薄板(厚さ0.5mm)をボルトにより固定する.この薄板の振動を加速度計によって測定することで,ダクト内部の音場を検出する.また,板を加振することで制御音源として用いる.3カ所の薄板は,入り口から出口に向かって,入力センサ,制御音源,誤差センサの順である. 実験装置の振動特性および,ダクト内部の音響特性を測定し,有限要素法,境界要素法の解析結果と比較したところよく一致した.さらに,構造系と音響系の連成解析も行ったところ,薄板の固有振動数付近では,連成の影響が無視できないことがわかった.これらの,実験および解析の結果から得られた伝達特性を用いて,音響制御のシミュレーションおよび実験を行った. 本研究課題に関連して新たに,周波数領域での適応アルゴリズムを考案し,シミュレーションを行ったところ,従来広く用いられているFiltered-XLMSアルゴリズムに比べ, 1.計算量が少ない 2.ステップパラメータの選定が不必要である 3.初期収束性に優れている という利点がある一方で, 1.最終的な収束が若干劣る 2.ハウリングの影響を受けやすい といった欠点も有していることがわかった.このことは,実験的にも確認し,欠点の1.についてはそれほど大きな差がないこと,2.については十分な対策が必要であることがそれぞれわかった. 今後は,アルゴリズムに改良を加えることで,ハウリングの対策が可能であるかどうかと,ハードウェア的にハウリングを回避することについての検討を行う.
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