研究概要 |
これまでに設計制作したクローラ走行体縮小模型を改良し,クローラが水平平坦路面を自走する場合について走行実験を実施した。走行体には各種センサーを搭載し、8項目の走行体挙動について測定データを採取した。 今回の実験では,シューに作用するせん断力と接地力を分解して測定するための特殊な部材を付加したシューを考案製作した.これをクローラベルトに装着することによって,シューに作用するせん断力と接地力を高精度に測定することが可能となった.また,シューに小型のジャイロセンサーを搭載し,シューのピッチング回転速度を測定した.そして,このデータをコンピュータで数値積分することによって,クローラ走行中のシューのピッチング角度を測定することに成功した.これにより,シューが地面から受ける影響のみならず,シューが地面に与える影響や走行中のシューの挙動を詳細に把握することが可能となった. (1)クローラベルトは,従動輪,駆動輪,転輪等がその上を大きな過重を伴って通過するため屈曲する.この屈曲がクローラの走行性能に大きな影響を与えている. (2)走行中,接地しているシューに作用するせん断力は,推進力を発生させる方向と逆方向の力のほうが支配的である. (3)接地力は,走行体を支持するだけでなく,シューの屈曲により推進力と推進抵抗を発生させている. こでまでクローラの推進力は,シューが路面をせん断するその反力として得られると考えられてきた.しかしながら本研究により,クローラが水平平坦路面を自走する場合,シューに発生する力は,推進力より大きな抵抗が支配的であることがわかった.それでもなおクローラが駆動力を得ているのは,シューの接地力がシューの傾きにより推進力を発生させているものと考えられる.
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