送電線への雷撃の場合、架空地線や送電鉄塔の部材が大地に対して水平に置かれているために、たとえ雷放電路が大地に対して垂直であったとしても水平方向に流れる電流成分が強制的につくられる。従って、この水平成分の雷撃電流によって、通常の大地への落雷の場合とは異なる電磁界成分、すなわち水平偏波成分(水平電界成分と垂直磁界成分)が発生する。これを受信できれば、多くの落雷の中から送電線への落雷だけをピックアップできる。この原理を元にして、本研究では送電線への落雷検知システムを開発し、このシステムにより送電線事故に至らない落雷を検知することにより、架空地線、避雷器、線路用避雷器、接地抵抗の低減、防雷線等の多くの耐雷対策の有効性を検証することを最終目的としている。 垂直磁界成分を受信するアンテナとして、直径1mのワンターンの水平ループアンテナを制作した。このアンテナは垂直ループアンテナと同じ位置に配置した。アンテナからの出力は増幅された後、購入した4チャンネル、10ビット、10Mサンプル/秒のディジタルレコーダに記録された。下図に示された磁界変化(上から南北方向の垂直ループ、東西方向の垂直ループ、水平ループ各アンテナからの出力)は今年度夏季に観測された一例である。同図(a)は送電線への落雷の例であり、垂直磁界にも変化が見られる。一方、同図(b)は大地への落雷の場合で、垂直磁界成分には変化が見られない。予想が見事に立証されている。今後は、送電線への落雷を自動的に判定するシステム構築のために、落雷データをもっと増やしていきたい。
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