研究概要 |
パルスパワー発生装置には,パルス圧縮・重畳の各段階に応じて幾つかのギャップ・スイッチが用いられている。従って,パルスパワー発生装置の特性を把握するためにはギャップ・スイッチの抵抗変化を知ることが必要となる。しかしながら,スイッチ間の電圧は数百kVから数十Vまで大きく変化するため電圧の正確な測定が難しいことや,スイッチのインピーダンスが抵抗性と誘導性からなっているため区別が難しいなどの困難から,これまでギャップ・スイッチの抵抗変化は明らかにされていない。我々は,正確に測定可能な電流波形と絶縁破壊電圧を使って回路方程式を解くことによりアーク抵抗を求める方法を考案し,各種ガス中の放電に適用してきた。本年度の研究では,アークプラズマの電子エネルギーなど物性面に主眼をおき,大気圧室内空気を対象にアーク抵抗の変化を調べた。数kAから数十kAの間で電流を変化させアーク抵抗を求めた場合,抵抗値は数百mΩから数十mΩまで減少した。これは電流値の増加によりアークプラズマの温度が上昇することやアーク半径が増加することなどによものと考えられる。アーク電流のピーク値3kAにおいてアーク抵抗の最小値は210mΩであるが,25kAでは85mΩとなる。また,電流が最大に達するまでの時間は実験装置の回路パラメータで決定され,本装置の場合約700n秒となるが,アーク抵抗は約900n秒で最小値となり,電流がピークに達する時間から200n秒程度遅れて最小となることが明らかになった。これは,アーク電流が流れてプラズマが加熱されるまでに時間を要するためと考えられる。
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