本研究では、まずGaAs/AlGaAs系量子ドット素子の作製を有機金属気相成長法(MOCVD法)を基本とした選択成長法により試み、最小で横方向閉じ込めサイズが25nm以下のものを作製することに成功した。また、それらの素子における励起子の3次元閉じ込め効果を低温(4.2K)におけるフォトルミネッセンス特性やフォトルミネッセンスの磁場効果により確認した。 一方、分子線エピタキシ-法(MBE法)を用いGaAs基板上に作製したGaAs/AlGaAs系の高電子移動度トランジスター(HEMT)基板に、電子ビームリソグラフィー法とシャロウウエッチング法により有効チャネル幅約60nmの量子細線を作製した後、リフトオフ法を用いて細線部分に二つのトップゲートと一つのサイドゲートを形成することにより、新しいタイプの量子ドット素子を試作した。そして、試作した量子ドット素子において、ゲート電圧変化により量子ドット内の電子数を変化させたときコンダクタンスが振動する現象いわゆるクーロンブロッケード振動を観測したところ、従来型の素子においては実現できなかった良好な特性を観測することができた。 また、同素子を用いたターンスタイル操作により、4桁以上の精度を有する量子化電流の実現に成功した。さらに、この素子について光励起単電子トンネル効果についても試みてみたところ、マイクロ波領域の光(電磁波)を素子に照射したときのクーロンブロッケード振動の変化のようすが理論計算と非常に良い一致を示していることを見いだし、光励起単電子トンネル効果が実際に実現可能であることを示した。
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