PMN(PbMg_<1/3>Nb_<2/3>O_3)セラミックスは電歪材料として優れた性能を示す物質の一つである。しかしながらその電気歪み量は既に実用化されている圧電材料に比べて一桁近く低いため、電気歪み量の向上が現在大きな関心を呼んでいる。そこでPMNセラミックスにおける光特性を評価する前の段階として、異種元素の微量添加による電気歪み量の向上を試みた。これは光歪み量と電気歪み量とがある相関関係にあることから、電気歪み量の向上はすなわち光歪み量の向上にとっても大きな効果をもたらすからである。 まず最初の段階としてPMN単体のコロンバイト法による合成を試みた。そして合成温度、混合法、焼結方法等のパラメータを検討することで、相対密度が96%以上のPMNセラミックスを得るための条件を確立した。このようにして合成したPMNセラミックスの電気歪み量Δ1/1は室温で約1×10^<-4>という値を得た。この値は、これまで文献等で報告されている値とほぼ同じであった。続いて電気歪み量の向上を試みるための予備実験として、PMNにチタン酸鉛(PT)を10wt%添加したPMN-PTセラミックスを合成し、その電気歪み量を測定したところ、Δ1/1は室温で約1×10^<-3>という非常に高い値を得ることができた。しかしながらPT添加により、キュリー温度がPMN単体のときの0℃から室温付近までシフトした結果、電気歪み量の温度依存性もまた大きくなった。これは実用上好ましくない。そこで、微量添加しても室温付近での電気歪み量の温度特性がほぼ一定であり、しかもPMN-PTセラミックスと同程度の電気歪み量を示すような添加剤を検討したところ、酸化銅(CuO)の1%以下の添加が効果的であることがわかった。現在種々の(1-X)PMN-XPCuN系セラミックスを合成し、その電気特性を検討している最中である。
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