プラズマ処理を用いて有機薄膜の結晶化を抑制し、有機発光素子の安定化を試みた。アルゴンRFプラズマ中に正孔輸送材料を薄膜化した試料をおき、表面にプラズマ処理を施した。その結果、通常では数日後には結晶化がひどく進展するトリフェニルジアミン誘導体が三ヶ月経ってもほとんど結晶化しなかった。これは電荷輸送材料の結晶化が有機発光素子の劣化の一要因であるといわれることに対してプラズマ表面処理が極めて有効な手段であることを示唆する。原因としては表面および膜中での分子間の架橋、膜表面の結晶開始核の除去、残留ラジカルの酸化とその分極に起因する分子間力の増加が考えられる。また、プラズマ表面処理により結晶化が抑制化されるということは結晶化の開始点は膜中に存在するのではなく、表面に存在していることが明らかとなった。しかしながら、プラズマ表面処理層に続けて発光層を積層した場合には、表面処理層によるキャリアトラップでのキャリア数の減少や酸化物の影響により励起子の消光が生じ電界発光効率を低下させる。このEL効率の低下はトリフェルジアミン誘導体を再堆積することにより回避することができる。このことは表面酸化物による消光が原因であることを示唆する。 実用的な寿命に関してはプラズマ表面処理を施した試料は未処理試料に比べて悪化した。これはプラズマ表面処理は膜表面のみに影響を与え、バルクの膜構造に影響を与えていない。そのため、キャリアとラップの影響により駆動電圧が上昇し、ジュール熱の上昇を招いたことが原因であると考えられる。本研究の成果はJpn.J.Appl.Phys.に現在投稿中である。
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