本研究の目的は、レーザード-ピング時の基板温度を室温から1000℃までの広い温度範囲で、短時間熱処理を行いながら、Si基板表面近傍に効率よくEr発光センターを導入する手法を確立することである。 成果1)Erド-ピングに先立ち、SiにP原子をin-situでレーザード-ピングを行った。IR照射により800℃に基板温度を保ちながらエキシマレーザード-ピングを行った結果、表面から180Åの極表面領域にn-Type層を形成することに成功した。IR照射を行わない場合、RBSチャネリング測定による評価で結晶性は低下しているが、IR照射を行った場合、I)ドープしたP原子は格子位置完全に置換していること、II)ド-ピング領域は、基板に用いたSi単結晶と同様の結晶性を保持していること、を明らかにした。 成果2)IR照射を行いながらErド-ピングを行うことにより、基板の深さ方向に対する温度勾配が小さくなることにより、より深い位置まで均一な濃度でErド-ピングが可能となることが、熱伝導解析の結果と比較して明かとなった。更に、600℃を越える温度に基板を保持した場合、Si基板表面から基板内部のEr原子に酸素原子が取り込まれ、Er発光センサーの発光強度が2倍以上に増大することを初めて明らかにした。酸素原子挙動は、共鳴RBS測定を発展させて、共鳴チャンネリング測定を行うことにより初めて確認できた。IR照射による真空チャンバー外からの熱源の供給は、汚染がなく、レーザード-ピング方と組み合わせることにより、従来レーザード-ピング法で問題となっていた、結晶欠陥導入等を防ぐことが可能となることを初めて示した。
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