有機金属分子線エピタキシ-(MOMBE)法を用いたエピタキシャルAl_2O_3/Si多層構造の形成についてこれまで研究を行なってきた。材料ガスとしてはトリメチルアルミニウム(TMA)と酸素(O_2)を用いて、成長温度800℃においてAl_2O_3膜がSi基板上に成長できているが、急峻なヘテロ界面を得るには、成長温度の更なる低下が望まれる。本研究では、Alのソースガスの検討や、O_2ガスの直接励起等の成長方法改善により、Al_2O_3/Siヘテロ界面の高品質化、Al_2O_3/Si超薄膜多層構造の形成とその応用を目的とした。 始めに、O_2ガスをRFプラズマにより直接励起して生成した酸素ラジカルをAl_2O_3の成長に用いることを考えた。Al_2O_3/Si成長の初期にはSi基板の 酸化が起こっていると考えられるので、Al_2O_3成長の基礎研究として、酸素ラジカルとSi基板表面との反応について調べた。その結果、O_2ガスと酸素ラジカルではSi表面の酸化形態が大きく異なることが分かった。酸素ラジカルを用いてSi表面を均一に酸化できる条件をAl_2O_3成長に用いると急峻なAl_2O_3/Si界面が得られることが確かめられている。 次に、Alのソースガスの検討として、TMAよりも分解温度の低いジメチルエチルアミンアラン(DMEAA)をTMAの代わりに用いてAl_2O_3膜の成長を行った。DMEAAは比較的新しく開発された有機金属ガスであり、詳しいデータが得られていなかった。そこで、Al_2O_3の成長に先だってAlの供給源としてのDMEAAの特性について調べるため、Si基板上へAlの堆積を行った。その結果、TMA等のアルキルアルミニウムでは困難であったAl膜のSi基板上へのエピタキシャル成長ができた。実際にDMEAAを用いてAl_2O_3の成長を行なった結果、100℃の成長温度低下ができた。
|