研究概要 |
金属、半導体表面とハイドロカーボン及びハロゲンラジカルの反応過程をX線光電子分光(XPS)、赤外反射吸収分光(IR-RAS)により調べた。まず、将来のLSI配線材料として注目されている銅(Cu)表面のメチルアルコールプラズマによる反応過程を検討した。エッチング処理後の表面結合状態をXPSにより調べた結果、C_<1s>,O_<1s>ピークからエッチング表面にはエッチング種であるハイドロカーボンの他にカルボキシル基(-COO-)の存在が認められた。また、Cuのスペクトルから、最表面は1価のCuで覆われていることがわかった。このことから、メチルアルコールプラズマに曝されたCu表面では、エッチングガスであるアルコールが酸化分解され酢酸(CH_3COOH)を形成し、Cuと反応して酢酸銅(I)(CH_3COOCu)を形成していると考えられる。酢酸銅(I)は昇華点が270℃とCu化合物の中では比較的蒸気圧の高い物質であり、これが基板表面へのイオン照射によりCu表面から脱離しエッチングが進行することが示された。 次に、LSIデバイスの基板材料であるSi表面の反応過程を検討した。LSIプロセスにおいて一般的に使用されている水素終端Si表面とフッ素原子との反応をIR-RAS及びXPSで観察した。IR-RAS分析の結果、基板表面の終端水素は、フッ素原子の照射に伴い急速に減少する。それに対し、Si原子のフッ素化反応には、終端水素がほとんどなくなるまで遅れ時間があることが観察された。フッ素化反応過程についてはXPS分析においても同様な結果が得られた。これらのことから、基板表面に供給されたフッ素原子は、基板表面を終端している水素原子と選択的に反応し、HFとして水素を表面から引き抜き、表面の終端水素がほとんどなくなった後、はじめてSiのフッ素化が進行することがわかった。
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