アモルファス半導体は光に非常に敏感な材料で、光機能性デバイス、中でも太陽電池の材料として期待されている。しかしながら、光によって構造が変化したり、準安定な欠陥を生成してしまうことが実用化の大きな壁となっている。これまでこの材料に関する研究では、バンドギャップ相当のエネルギー領域の光の照射による性質、すなわち、この領域の光は、最外殻の電子を励起するので、外殻電子の励起とそれに伴う構造変化の性質について議論されてきた。 本研究では、原子同士の化学結合に直接関与しない内殻電子を励起できるエネルギーを持つシンクロトロン放射光を用いて、アモルファス半導体の光照射による構造等の変化について研究した。アモルファス半導体材料の中でも可視光領域で光構造変化が詳しく研究されているカルコゲナイド系アモルファス半導体について、シンクロトロン放射光による光構造変化について調べた。以下に結果をまとめる。 1.シンクロトロン放射光においても、可視光同様な光学バンドギャップのレッドシフト(光黒化現象)が観測された。 2.光黒化現象は、ガラス転移温度より低い温度のアニールにより元の状態に戻る(可逆性がある)。 3.シンクロトロン放射光による構造変化は、可視光より2桁も少ないフォトン数で進行する。 4.光構造変化は、内殻準位に相当した光で速く進行する。 これらの結果は、光構造変化に関する新たに得られた性質であるが、可視領域の光構造変化の性質と、今後、シンクロトロン放射光による光劣化等の研究を合わせて考えることにより、そのメカニズムを明らかにしていきたいと考えている。
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