紫外線硬化型樹脂を用いた高分子分散型液晶素子は、素子の作製時、つまり紫外線を照射し高分子相と液晶相に分離する過程が素子の特性に大きく影響することが知られている。研究者は、電圧除去後も高い透過率を保持することができる(メモリ効果)を持つポリマーボールタイプの高分子分散型液晶素子において、相分離過程での素子の透過率、電気抵抗、および静電容量の変化を測定した。その結果、相分離の開始時刻に静電容量が、修了時刻には抵抗値それぞれピークを示し、透過率の変化のみでは不明瞭であった相分離開始および終了の各時刻が素子の電気的特性の変化によって、明確に示すことができることを明らかにした。 次に、紫外線照射をさまざまな相分離過程、つまり相分離開始直後、終了直前、終了直後、終了後も継続照射等で停止した素子を作成し、メモリ効果および電気光学特性を測定した。その結果、紫外線が不足すると、メモリ透過率は小さく駆動電圧が大きいこと、過度の照射時間は駆動電圧の増加を引き起こすことを明らかにした。このため、駆動電圧を最小に、メモリ透過率を最大にするような紫外線照射時間を、種々の紫外線強度において明らかにすると共に、最適な紫外線照射時間を知るためには、相分離時の素子における抵抗値の変化を観測する手段が非常に有効であることを示した。また、抵抗値の変化をモニターする手法は、相分離時の温度の変化にも対応できることを明らかにした。さらに素子の厚さや面積の変化、高分子と液晶材料の混合割合の変化等にも応用可能であると考えられる。
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