本研究は走査型表面光電圧法の高速測定技術として並列積分デジタルロックインアンプを中核とするデジタルLAPS測定技術を開発し、高密度2次元バイオイメージを高速に測定できるシステムを構築する研究を行った。測定技術評価用システムとして図1に示す測定系を構築し、並列積分における各パラメータがシステムの動作に与える影響を調べた。その結果、積分時定数は収束を早めるために初期値を比較的小さく設定して、1周期ごとに時定数を対数的に増加させる「可変時定数」の手法を用いることが可能で、より短時間に測定できることがわかった。また、並列積分することにより各測定点の1周期ずつ離散的に測定するため、バースト的なノイズや周期性を持つノイズに対しても動作が安定しており、積分時間の短縮に効果があることがわかった。また、イメージの時間変化を測定する際には1回の測定が完了して得られた2次元イメージを次の測定の積分初期値として用いることで、より早く収束させることができることもわかった。 この評価システムを用いてセンサ面積5×5mmにおいて励起光のスキャンを0.1mmステップで2次元測定した場合にはおよそ1minで測定が完了することがわかった。これは研究計画の目標を十分に達成するものである。また、今回開発した測定技術に基づいてDSPプロセッサ等を用いて専用信号処理回路を作成すれば、より高速な測定が期待できる。今後は以上のシステムを用いて培養細胞群の表面電位分布のリアルタイム観測を行う予定である。
|