研究概要 |
本研究の目的は,人間の姿勢制御系の特性を,より詳細に明らかにすることにある.特に,従来の研究は線形近似によるものが大半であるが,非線形な特性変化が骨格に関連があることが判明してきたため,今回は,さらに筋の活動と姿勢の関係を定量的に検討することが,主目的である. 21から24歳の健常青年男子被験者に,前傾,後傾などの4動作を指示し,そのときの24筋の筋活動量をデータレコーダに記録し,整流回路,積分回路(時定数0.5s)およびA/Dコンバータを介してサンプル間隔10msで計算機に取り込み,動作開始時,終了時および動作中最大値の筋放電量を求め,各筋につき平均と標準偏差を求めた. 姿勢変化と筋放電量変化の関係から,股関節伸展は大腿二頭筋や半膜様筋が主体であること,後傾時に重心から遠位の下腿の筋ほど活動量が大きいこと,また左右の荷重移動には支持脚側の中殿筋と遊脚側の腰方形筋が寄与していること,などが明らかになった. 特に、特徴的な非線形特性としては,拇指を屈曲させる長母指屈筋の活動量と、前傾によって拇指に作用する屈曲モーメントの間の、比例係数が、床反力作用点が拇指よりも前方にあるか後方にあるかで、変化する点であった。すなわち、本実験により、姿勢制御系が、状況に応じたゲイン調節をおこなっていることが確認された。 この結果は、バイオメカニズム学会、計測自動制御学会等において発表し、さらに脊髄神経回路の活動量の変化の推定など、中枢神経系の関与を、より詳細に調べる計画である。
|