近年その進歩がめざましいME(医用電子工学)高度医療技術の発展に対して、医師と高度治療との関係は更に“かたい"関係になりつつある。医師が複合的に絡み合うME機器からの数値データを解釈し、適切な治療指示を数値により与えられるようになるまでには相当な熟練を要するが、今日の高度医療技術開発においては、もはや通常の医師の度量を越えつつあると言っても過言ではない。 本研究では、高度複雑化する医療を支援するために、生理モデル・生理データベースからなる仮想人体を核として、医師・患者と高度医療技術との円滑な関係「メディカルインターフェース」の構築ならびにこれらに基づく治療制御法の確立を目的としている。本年度は、人口腎臓を用いた血液浄化治療および人工心臓を用いた集中治療を対象として、1)オブジェクト指向プログラミングによる仮想人体、2)治療条件設定のための知的インターフェース、3)治療装置と患者との生理的インターフェース、4)病態認知ための感覚的インターフェース、を構築し、さらに臨床応用可能な計測装置・治療装置と組み合わせることによって、臨床適用が可能なものについては臨床応用を試み、その評価・解析を行った。仮想人体構築に関しては、体液系モデル、循環系モデル、血圧制御系モデル、代謝系モデルからなるオブジェクトとして構築しメッセージセンディングを有効に利用した。また、生理情報と生理モデルと数式のインターフェースとしてモデルビルダーを開発し、極めて容易に生理モデルが構築可能な環境を提供することができた。これにより生理的インターフェースが統一でき状態観測器の構成ですら医師により可能となった。また、これまで開発を進めてきた循環血液量、酸素飽和度の無侵襲計測法をオブジェクトとして組み込み、臨床応用として血液浄化治療での効率の良い状態観測器の構築支援環境を提供することができた。今後は、十分な検討を加え、慎重に汎用治療制御システムとして構築して行く計画である。
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