研究概要 |
申請者らは人間に見られるような優れた触知覚を可能とする触覚センサを実現することを目指しており,そのためにはセンサ自身が3次元的な広がりを有していることを積極的に利用することが重要であることをこれまで様々な角度から示してきた. 本研究では弾性体中を3次元的に伝搬する超音波を積極的に利用するセンサを提案し,実験的検討を行った.適度な波長の超音波の強度,位相両方の情報を利用する差動計測構造により,簡単な構造のセンサが,多様かつ高度な触覚情報を高速に取得することが可能になる.すでに前年度において接触の際に発生する超音波幅射を利用するセンサを提案していたが,本年度はさらに表面近くに超音波発信体を配置し,その能動超音波をも利用するアーキテクチャの提案と,そのプロトタイプの試作,実証実験までを行った. 本センサは指先状弾性体の中心部分に配置された超音波受信子と,表面近くに複数配置された超音波発信体(各々が4つのサイトからなる)から構成される.その動作は時間的な切替えによって受動モードと能動モードの2種類を有し,能動モードにおいては(受動モードでの動作は超音波エミッション触覚センサと同一)発信体付近の多自由度の変位(変位ベクトル3自由度と面の傾き2自由度)を高感度(10μmの変位分解能と0.001rad以内の傾き分解能)で検出可能であることを確認した.そして能動モードにおける多自由度の変位検出能力を利用して把持動作中に対象の滑べりを予知する応用実験を行った.
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